プロが教える家づくりのヒント HINT

家づくり

IoT住宅ってなに?

 
住宅建築のプロが納得できる
家づくりのヒントをお話しするブログ。
 
今回のテーマは「IoT住宅」です。
 
2010年代に入って
スマートハウスという言葉が急速に普及し
続いて2016年には、
大手ハウスメーカーが
ZEH仕様の商品を一斉に発売、
さらに2017年からは
IoT住宅への取り組みが本格化。

その後、
スマートスピーカー(AIスピーカー)の
普及が進んで、
2019年にはGoogle・Amazon・Appleが
スマートホーム規格の
標準化に向けて提携・・・。

今、住宅を取り巻く先端技術は
目覚ましいスピードで進歩しています。

次々と新しい技術や概念が登場するので、
それぞれの言葉の定義や
具体的にどんな住宅で
どんな暮らしができるのかを
きちんと説明できるかというと
プロでも意外と難しかったりします。

下のグラフは「新建ハウジング」という
業界誌が行った
工務店アンケートの結果です。

IoT住宅を「深く理解している」とした
工務店はわずか11.8%、
「ある程度は理解している」が
6割を占めています。
 
一方で、お客様からIoT住宅について
質問があるかというと、
こちらも6割以上が「ない」と回答。

IoT住宅は今のところ
お客様にも工務店にも
まだまだなじみがないといえそうです。

とはいえ今後、
住宅のIoT化は急速に進むと
考えられています。

急速に進むということは、
今ないものが数年後には
当たり前になっているかもしれない
ということ。

住宅は一度建てたら
簡単にはやり直せませんから、
この変化にどのように対応していくかは
ひとつの課題です。

今日は住宅と住生活関連のIoT化の
現状を確認し、
国土交通省の資料なども踏まえながら
どのように備えていくとよいかを
考えてみます。

なお、今回取り上げるのは
あくまで数年先程度の近い将来のお話。

10年あるいはそれ以上先の
技術の進歩は見通すのが難しく、
規格そのものが変わっていく可能性も
十分あります。
 
そのため現実的に短いスパンでしか
対応策を考えることができませんが、
国土交通省も既存住宅にIoT機器を
後付けできるようにすべきとしているため、
今後の動きに期待したいところです。



この記事でわかること
□ IoTの定義
□ スマートハウスとの違い
□ 2020年最新情報
□ IoT家電のいま
□ 数年先の住宅IoT化への備え 

 
目次


1.IoTとは・IoT住宅とは
2.IoT住宅とスマートハウスの違い
3.Google・Apple・Amazonが
  スマートホーム規格の標準化へ提携

4.IoT家電のいま

5.住宅のIoT化、スマートホーム化の備え

 


 


IoT【アイ・オー・ティー】とは
Internet of Things、
日本語で「モノのインターネット」と訳され
身のまわりのあらゆるものが
インターネットにつながることをいいます。

高齢の親が電気ポットを使うと
その使用状況が離れて暮らす子どもに
メールで届く・・・という
電気ポットメーカーのCMを
見たことがありませんか?

みまもりホットライン”という
安否確認サービスですが、
これはポットをインターネットに
つないだことによって
実現したしくみです。

外出先からお風呂を沸かしたり、
エアコンのスイッチを入れたりといった
家電の遠隔操作もIoTの一例として
なじみがあるのではないでしょうか。

今後IoT市場は
飛躍的に拡大すると予測されていて、
経済産業省もIoT社会に向けた取り組みに
力を入れています。
 
では、住宅分野における
IoTの状況はというと。

先ほど例に挙げた家電のIoT化も
住宅にまつわる動きの一部ですし、
2017年には国土交通省の
「次世代住宅プロジェクト」
(サステナブル建築物等先導事業
[次世代住宅型])
が始まったり、
暮らしに関わる様々な業界の企業
100社以上が集まって
「暮らしのIoT」に取り組む
コネクテッドホームアライアンス
設立されるなど、
IoT技術の活用による
住宅や住生活の質の向上への期待が
高まっています。

よく挙げられるIoT住宅のイメージは
こんな感じ。

朝決まった時間になると
カーテンが自動で開き、
照明やエアコンがONになる。

出かける準備ができて
「行ってきます」というと
すべての電源が自動でOFFに。

夕方、陽が沈むと
住人が帰宅していなくても
自動でカーテンが締まり
照明が灯る・・・。

AI(人工知能)が
住人の生活パターンを学習することによって
こうした制御を自動で行うようになる
というものです。

自宅にメイドさん(or執事)が
いるようなイメージだそうです。




次にIoT住宅とスマートハウスの違いを
確認しておきましょう。

IoT住宅に先駆けて
2010年代初めから普及が始まった
スマートハウス。

日本では特に大手ハウスメーカーが
太陽光発電や蓄電池を設置し
HEMSでエネルギーを
賢くコントロールする家を
スマートハウス
として売り出したため、
そういったエコ住宅を
スマートハウスということが
多くなっています。

※HEMS(Home Energy Management System)
 家庭で使うエネルギーを節約するための管理システム。
 エネルギー消費量や太陽光発電の発電量などを
 モニターで見える化したり、使用量を自動制御する。
 


こんなイメージです

最近ではエネルギー制御だけでなく、
次にご紹介するような
IoT機器を取り入れた住宅も
スマートハウスあるいはスマートホーム
というようになっています
ので、
ほとんど同じ意味で
使われるようになっていくでしょう。


 


2019年12月、
Google、Apple、Amazonと
Zigbee Allianceが
スマートホーム製品間の
互換性を高めるための
新たな接続規格を開発する
ワーキンググループ
「Project Connectes Home over IP」の
立ち上げを発表しました
(参考ITmedia記事)。

2019年はGoogle、Apple、Amazon、
それにLINEなど各社が
スマートスピーカー(AIスピーカー)を
積極的に販売しました。

低価格化も進み、
2000円前後で手に入る製品も
めずらしくなくなっています。

家の中の様々な製品を
ネットワークでつなぎ、
スマートスピーカーで制御するのが
当たり前の時代がやってきました。
 
ここで大事になってくるのが
接続規格です。

エアコン、照明、冷蔵庫、音響機器など
様々な製品をスマートスピーカーと
接続するわけですが、
このときに
「うちはGoogle Homeを使っているのに
エアコンがAmazon Echoにしか
対応していない」
なんてことになるとたいへんです(※)。

せっかくスマートスピーカーを使っていても
接続できる製品と
できない製品ができてしまう・・・

これじゃあ
スマートホームになりません。

そこで、統一の接続規格をつくって
どのスマートスピーカーでも
制御できるようにしよう!

というのが今回の動きです。
 
※Google HomeやAmazon Echoはデバイスの名称で、
正確には接続している相手は
Googleアシスタント・Amazon Alexaです。

 
Zigbee Allianceは
近距離無線通信規格Zigbeeを使った
通信規格開発に取り組むグローバルな団体で、
IKEAなどが加盟しています。

プロジェクト参加企業


今回立ち上がった
Project Connectes Home over IPは
スマートホーム関連の機器を開発している
すべての会社にこのプロジェクトへの参加を
呼び掛けていますから、
今後は世界的にスマートホームの
規格統一が進むと考えられます。
 
私たちユーザーにとっては、
どの製品を購入しても
簡単にスマートホーム化できて
とても便利になるでしょう。

楽しみですね!

とはいえ、
本格的な開発は2020年後半から。

今しばらくは次の項目以降で
ご紹介するような
部分的なスマートホーム化・IoT化が
中心だと考えられますから、
最後にご紹介する
「住宅のIoT化・スマートホーム化に備えて
今建てるときにできること」を
ある程度押さえておくのがよいといえます。





住宅と生活まわりでIoT化が
最も進んでいるのが家電です。

まずはIoT家電の現状を見てみましょう。


外出先からの遠隔操作はもう定番!

2018年上半期までに比較的普及していて
簡単に購入したり
後付けで対応できたりするのは
リモコンで操作できるもの。

エアコン、照明、給湯器(お湯張り機能)、
テレビ、HDDレコーダーなどは
最近の機種であれば
外出先からスマホアプリで
操作できるものがたくさんあります。

ただ、スマート家電を謳っていても
「スマホで操作できる」だけが
特長の製品も見られます。

今ちょうど生活の質を向上させてくれる
製品が次々登場しているところなので、
買い時かどうかはよく見極めることを
おすすめします。

そんな中、比較的IoTで
暮らしが変わったと実感できるとしたら、
冷蔵庫でしょうか。

シャープのCOCORO KITCHEN
AIと連携してレシピやよく買う食材を
定期的にお知らせしてくれますし、
LGのSmart Instaview
レシピ検索はもちろん、
庫内のカメラで食材の在庫確認ができたり、
足りない食材をネット注文できるなど
IoTで暮らしが変わったという
実感を得られそうです。


遠隔操作だけなら
スマートリモコンで十分かも

 
家電などを外出先から操作したいだけなら、
本体が遠隔操作仕様になっていなくても
リモコンで操作できるものなら
スマートリモコンでだいたい制御できます。

スマートリモコンとは
いろいろな家電の赤外線リモコンの信号を
端末に覚えさせてひとつのリモコンで
操作できるようにするもので、
スマホアプリで外出先からも操作できます。

製品としては
eLifeNatureRemoMagicCube
スマート家電コントローラあたりが
メジャーなようです。
 
製品によっては
今年急速に普及が進んでいる
スマートスピーカー/AIスピーカー
Amazon EchoGoogleHome)とも
連携できます。

スマートキー、スマートロックも普及中
 
スマートキー / スマートロックも
普及が進んでいます。

触れるだけ、
スマホやカードをかざすだけで
カギを開け閉めできるものや、
リモコンを持っていれば近づくだけで
開錠できるものもあります。

車のドアでは
一般的になっている機能ですね。

こちらも最近の製品なら
玄関ドア本体に組み込まれていますし
LIXILさんのこういうやつとか)、
後付けできるスマートロックも
いろいろ市販されています。

後付けならQrioNinjaRockあたりが
使いやすそうです。
Qrio Lock
画像はQrioサイトより拝借

スマートリモコンや
スマートロックに加えて
ネットワークに接続できる
スマートコンセントなども用意して
Google HomeやAmazon Echoといった
スマートスピーカーと組み合わせれば、
家の中のいろんなものが
音声で動かせるようになり
ちょっと今までとは違う暮らしが
体験できそうです。


 


国土交通省のIoT技術等を活用した
次世代住宅懇談会では、
IoT技術を導入するにあたり
住宅・住宅生産において
特に配慮しておくことを
取りまとめています。

詳しい資料はこちらをご覧いただくとして、
カンタンにまとめると

□手入れや掃除がしやすい造りにすること、
 設備機器をメンテナンスしやすいように
 配置すること。

□家族・世帯構成の変化に応じて
 間取り・レイアウトが変更しやすいこと。

□高齢者世帯の住宅における通信環境確保。

□コンセント数の確保、
 配線容量(空き配線を含め)の確保。

□外壁は無線通信を遮断し、
 内壁は透過しやすいものにすること。

□高断熱住宅の普及や建具の自動化への対応。

□住宅設備を住宅情報に紐づけた情報管理。

□設備、配管・配線を含む図面情報。

□分譲マンションの共用部では
 機器更新費用が
 長期修繕計画・修繕積立金に
 影響するという認識。

□設計・提案やアフター対応ができる
 人材の確保。

□情報弱者への人的サービスができる
 人材の確保。

手入れやメンテのしやすさ、
情報管理、アフター対応などは
住宅会社を選ぶときや
プラン・設計のときにも
考えておきたいところです。

これを踏まえつつ、
工務店の立場から
さらにお話しするとしたら。

構造など
後から手を加えるのが難しい部分は
あらかじめ考えておきたい

ということでしょう。


①床をフラットにしておこう
バリアフリーなどの目的ですでに
床をすべてフラットにしている
住宅は多いと思います。

IoT住宅ではロボット掃除機のように
家の中を自由に動き回る機器も
増えていくと考えられますから、
床をフラットにしておくとよいでしょう。

②引き戸にしておこう
上の国交省の資料にもありますが、
IoT機器が家の中を自由に動き回るために
ドアは自動化されると考えられています。
 
既存のドアを後から自動化する装置は
いくつか市販されていますが、
今のところ引き戸を前提にした製品が
多いようです。

開き戸(ドア)を
後から引き戸にすることもできますが、
引いたドアを収めるスペースが必要なので
どこでも引き戸にできるとは限りません。

新築のときに引き戸で計画しておくと
自動化には対応し易そうです。

AIスピーカーなどと
センサーでつながった機器が増えていくので
WiFiやBluetooth、ZigBeeなど住宅内の
無線通信環境が重要になってきます。

が、こちらはどんどん
新しい規格ができているので
今の時点で考えても
あまり意味がなさそう。

家の中を無線が飛びやすいように
つながりのある間取りにしておくとよい、
というくらいでしょう。

住宅と住生活のIoT化は
これからが本番です。

どんな暮らしが実現していくのか
楽しみにしながら、
情報収集など準備も整えていきましょう。