中部
矢はそれぞれの方向へ

朝から事務所の草をむしっていました。
陽ざしがじりじり照りつける、夏の始まり。
この場所では、毎年、草が生えてきます。
そして、誰かが抜かなければ、ずっとそこに居座り続けます。
一昨年は、私とふたりの仲間が、一緒に草をむしりました。
去年は、私ともうひとりの仲間が、一緒に草むしりをしました。
今年は、ついにひとりになりました。
よく「三本の矢」の話を思い出します。
一本の矢は折れてしまうけれど、三本そろえば折れない。
けれど、矢はそろいませんでした。
きっと、風向きが変わってしまったのかもしれません。
「時間がない」「それは自分の仕事じゃない」
そんな言葉が当たり前のように飛び交うなかで、
草は今日も、静かに伸びていきます。
そして、気づいた人が、しゃがみこみます。
三本の矢の話が、伝説で終わらないように。
あのふたりと、くだらないことを話しながら炎天下の中
しゃがんでいたあの日々を懐かしく思いながら。
この夏、地面を見つめながら一人でそんなことを考えていました。
名古屋支店 外崎